2025年大阪アジアン映画祭に出品されている台湾映画『私たちの意外な勇気』をみてきた。
今晩はTAIWAN NIGHTということで、大阪アジアン映画祭に出品している他の台湾作品の監督たちも上演前に集合。
右から
『洗』プロデューサーのツェン・ズーティン
『私たちの意外な勇気』監督のショーン・ユー
『黒犬』監督のヤン・リン
今回コンペティション部門審査委員を務める映画監督のフー・ティエンユー
こちらが今回見た『私たちの意外な勇気』のポスター。
ざっくりしたあらすじ※ネタバレ注意
マネージメント事務所で数多くのタレントを担当する優秀なマネージャーのラーフー(レネ・リウ)は45歳の誕生日に北京支社への栄転が決まった。5年付き合っている12歳年下のCMディレクターの恋人ボーエンは日夜問わず作業に明け暮れて二人は会う時間をあまりもてないでいた。
そんな誕生日の日、ラーフーが担当しているアーティストがセックススキャンダルに見舞われる。対応に追われたラーフーは急遽スタジオの1階で記者会見を行うことに。しかし、エレベーターに乗った途端ラーフーは意識を失ってしまう。
緊急搬送された病院で聞かされた診断結果は妊娠4ヶ月。しかもかなり不安定な状態で出産まで動くことができないと言われてしまう。長年望んでいたキャリアを前に突然の選択を迫られるラーフー。ボーエンは彼女が子どもを作る気がないことを知っているだけに、自分の希望を言い出せずにいた…
ざっくりした人物紹介と相関
ラーフー
演:レネ・リウ(劉若英)
タレント事務所の敏腕マネージャー。45歳の誕生日に北京支社の社長に昇進が決まる。しかし同じ日に自らの妊娠が発覚し、今後の選択を迫られる。
ボーエン
演:シュエ・シーリン(薛仕凌)
ラーフーの13歳年下の恋人。CMディレクターをしており、日夜問わず作業をして生活が安定しない。キャリアのあるラーフーに負い目を感じている。
ざっくりとした所感
やたら産婦人科周りの描写がリアルだなと思って感心しながら見てたら、実は監督のショーン・ユーとパートナーの実話を基にした話らしかった。そりゃ痛みやら不安やらがめちゃくちゃリアルなはずだ。これでもかというくらい妊娠の過酷さが画を通して伝わってくる。
本当に、妊娠は女にとって理不尽な現象で、本人が意図しないタイミングでも突然やってくる。避妊も100%確実ではないので「産みたくなければやらなければいい」という話でもない。しかも、産む以外の選択肢はないと言わんばかりに周囲、この場合はパートナーからの圧力が掛かってくる。拒絶はすなわち堕胎を意味しており、本人の気持ちの整理が整う前に重い選択を強いられることになるのだ。
個人的には、産むか産まないかの判断は夫でも、ましてや周囲の人間でもなく、産む本人の意思を尊重するべきだと思う。たとえそれが産まないという選択肢であっても。
命をかけなきゃならない上に、今までの積み重ねてきた仕事を捨てなければならないとなれば、女性だけかかる負担が大きすぎる。せめてキャリアが途絶えても必ず元の場所に復帰できる仕組みができていなければ全くフェアではない。
そんなことを考えてしまうくらい、妊娠してから出産までの心理的描写や身体的描写がリアルに感じられた。レネ・リウとシュエ・シーリンのキャスティングがピッタリハマった良作だと思う。