俳優として活躍し、現在は映画制作会社『天下一グループ』を率いるルイス・クー(古天樂)が、会社を設立する前に初めてプロデュースした映画映画。実在の人物である鍾健強から取材した話を元に、落ちこぼれの元編集者二人が伝説のポルノ雑誌を作り上げていくサクセスストーリー。
日本で上映してたかは不明だが、ソフト化・配信共に現在日本ではされていない。
パッケージはこんな感じ。とても机の上に放置できるものではない。当然レーティングはR18。
Contents
ざっくりしたあらすじ※ネタバレ注意
雑誌の編集者をしていたアンディ(ルイス・クー)は、同じ編集部で意気投合し親友になった阿忠(イーソン・チャン)や他数名と共に会社をクビになった。無職になったアンディはその場の思いつきで新しい雑誌の制作を提案し、クビになった同僚たちに出資者になってもらい、さらにはパートナーのパメラ(チェリー・イン)からも多額の融資を受けて会社を設立する。
アンディ以外の出資者4人、阿忠・阿四(リョン・ガーギッ)・マイク(ジェームス・リー)・阿寶(ウィリアム・チョー)はすぐに仕事を見つけられた。新聞社でアダルト版の編集者の仕事を手にした阿忠は、使えない外注先のライター二人の代わりに自分とアンディで記事を書くことに。
アンディたちが最初に手がけた雑誌『Look街』。ふたりが「肥龍」と「骨精強」の名前で書いた記事が大きな反響を呼んだ。アンディたちは出版業界の動向を調べた上でポルノ雑誌の制作にとりかかる。出版社と提携し、早速風俗街を回って取材を進めようとするも、当時は風俗のガイドブックが存在せず、二人は苦労をしながらもなんとか創刊号を作り上げた。
「豪情」創刊号は飛ぶように売れ、一気に知名度を上げたアンディと阿忠は地元の黒社会や風俗業社とも繋がりを持ち、着実にシェアを拡大していく。
ところが、提携していた出版社から十分な報酬を受け取ることができず、アンディたちはそれぞれのパートナーの家を担保に出版社から権利を買い取ることに。
その後、次々と斬新な企画を打ち出した「豪情」は最も売れているポルノ雑誌として名を馳せていく。そんな折、阿忠は雑誌で取り上げた風俗嬢の趙啷啷(ジェシー・ホー)に本気で恋に落ちる。そしてアンディも風俗嬢のKiki(ニキ・チョウ)と関係を持ってしまう。
本気でアンディに惚れたKikiの行動により、アンディとパメラは破局。パメラはふたりの家から去ってしまう。
パメラが去ったことにショックを受けたアンディは八つ当たりを繰り返し周囲との溝を深める。アンディと大喧嘩した阿忠は怒り心頭で会社を辞め、共に雑誌を支えてきた出資者の阿四やマイクもアンディに愛想を尽かして会社を去っていってしまう…
ざっくりした人物紹介と相関
アンディ
演:ルイス・クー(古天樂)
激情雑誌社の社長でポルノ雑誌「豪情」の編集長。パートナーのパメラと同棲している。
阿忠
演:イーソン・チャン(陳奕迅)
激情雑誌社の副社長でポルノ雑誌「豪情」の副編集長。パートナーのファニーと同棲している。編集社をクビになった後、新聞社でアダルト版の編集者となった。
パメラ
演:チェリー・イン(應采兒)
アンディのパートナー。明言はされていないが、おそらく在宅勤務のデザイナー。アンディの才能を信じて多額の融資をする。
ファニー
演:デニス・ホー(何韻詩)
阿忠のパートナー。金銭の融資だけでなく、雑誌編集にも関わっている。「豪情」を作り始めてから様子が変わった阿忠を疑うようになる。
阿四
演:リョン・ガーギッ(梁嘉傑)
雑誌の共同出資者。編集社をクビになった後、テレビ局に入って記者になった。神学を勉強している。
マイク
演:ジェームス・リー(李丞責)
雑誌の共同出資者。編集社をクビになった後、不動産業の社長についていき就職。
阿寶
演:ウィリアム・チョー(周子濠)
雑誌の共同出資者。編集社をクビになった後、会計事務所に就職。最後までアンディの元に残っていた。
趙啷啷
演:ジェシー・ホー(何超儀)
マッサージ系の風俗嬢。阿忠と恋に落ちる。
Kiki
演:ニキ・チョウ(周麗淇)
風俗嬢。酒豪でジャンケンゲームが得意なかなり変わった子。アンディと関係を持ち、アンディとパメラが破局する原因を作ってしまう。
崔波波
演:ジョー・コク(谷祖琳)
アンディと阿忠が「豪情」で最初に取り上げた風俗嬢。ナンバーワンのフロアガールになるという宣言通り、数年後にはかなりの稼ぎ頭になっている。
戴先生
演:クリフトン・コー(高志森)
出版社の社長。口が軽くかなり金に汚い人物。
張警官
演:ダニー・リー(李修賢)
風俗関係を取り締まっている刑事。
ざっくりとした所感
インディーズにしてはしっかりした作りの作品だと思う。無駄と思われるシーンや要素もあまり感じられず、2時間ある作品にしてはしっかりと最後まで見られた。
ナイトライフをテーマにした作品の割には暴力的なシーンや凌辱的なシーンがほとんどなく、レーティングがかかっている作品を見ている感じはあまりしない。テーマが変われば普通に全年齢向けのサクセスストーリーである。
終盤のパメラとの破局からアンディが友人たちを無くすまでの流れがかなり強引な感じはしたが、この作品のメインが「いかにして一冊のポルノ雑誌を作り上げたか」なので、ドラマの部分はこれぐらいあっさりしててもいいのかなといった感じ。ただ、パートナーたちにあり得ないレベルの不義理をかましといて親友と和解してハッピーエンドは都合が良すぎてかなり腑に落ちない。
ただ、自分の凋落の原因が自分自身の男性的な考え方にあるとアンディが明言しているシーンがあり、そこはこの時代の作品にしては珍しいなと思った。
役者が全員技巧派かつキャラクターとマッチしていて、コメディとしてのテンポもいい。裸の女性はたくさん出てくるが、性的な描写や表現はやりすぎず、必要最低限で留めている感じがする。そういう描写を求めている人には少々物足りないかもしれない。
ちなみにこの作品で趙啷啷を演じたジェシー・ホーは香港電影金像奨(香港アカデミー賞)で助演女優賞を獲得している。彼女が演じた趙啷啷は風俗嬢で明るく振る舞ってはいるものの、叶わない恋や苦労者としての表情が垣間見える印象的な役である。この作品の続編的な作品『大性豪』でも出演しており、個人的にはそっちの役もとても良い。
結果的にこの作品は予算200万香港元に対して4倍以上の800万香港元を稼ぎ出しているので、このテーマを面白いと感じて企画を進めたルイス・クーの着眼点は確かだったようだ。