あの頃、君は若かった〜『ライオン・キング』30周年記念リバイバル上映〜

30年前の声を聞きに映画館へやってきた。

ライオンキング30周年記念上映。何故か字幕しかやってないと思い込んでいた。
調べてみたら吹き替え版で上映していたので、即チケットをとって仕事終わりに見てきた。平日の夜にもかかわらず、思っていたより客の入りが良かった。リアルタイムではまだ生まれてなかったであろう20代が多く見られて、ディズニーブランドの底力を感じた。

ディズニーもピクサーもジブリも通ってこなかった幼少期だったから、当然『ライオン・キング』もリアルタイムで見てなかった。テレビや動画配信サービスでは何度も見たけど、劇場では初めて。高音質、高画質で見る『ライオン・キング』この臨場感だけでも来た甲斐があった。ハンス・ジマーの音楽も、動物の鳴き声やヌーの足跡などの効果音も、吹き替えも、全てが絶妙に重なり合い統一感があって、当時のディズニーの本気度とスタッフの力量の高さを感じた。
 
映像も素晴らしく、セル画のアニメーションで育ってきた世代には手書きの線がとても落ち着く。キャラクターのアクションも水や炎、ガスなど自然物の表現もダイナミックで迫力がある。画面の端の細部まで丁寧に描き込まれていて大画面でも粗さを感じない。同じ種類の動物でも個体差が明確に描き分けられていて、デフォルメのうまさにも舌を巻いた。
細かいところまでじっくり集中して観察できるのは映画館で見ることのメリットである。
 
他のキャストのことも言い出したらキリがないけど、ムファサとスカーの兄弟は本当に声も芝居も素晴らしい。大和田伸也さんの気品あるバリトンボイスは最高。やや傲慢さはあるものの志の高い王であり、だいぶ子供に甘い父親像がよく出ていた。カリスマ性があってコミカルかつドスの効いた壤晴彦さんのスカーもまさにハマり役といった感じ。
 
ほんと、スカーは魅力的なヴィランだった。
ストーリーが結構大雑把な『ライオン・キング』が名作たり得たのは、スカーの魅力によるところが大きいと個人的に思っている。相手を信用させる倫理観も演技力ももち、頭の回転も速い。ただし、致命的に爪が甘い。
ムファサが死んだ後、誰も見てないうちに自分でシンバを始末することもできたのに、あえてハイエナたちにシンバを襲わせた。ザズーも気に入らなければ始末すればいいのに、ちゃんと檻を作って生かしておいた。
美学なんだか知らないが自分の手はなるだけ汚さないし、無駄な殺生はしない。あれで長期的なビジョンを持っていたら割とまともな王になれたかもしれないのに、肝心の王国を運営する素養はほとんどない。「王になりたい」という単純な望みのためだけに後先考えず破滅に向かうところが実に可愛らしい。
さらに、喧嘩が弱いところも良い。そんな喧嘩三流の叔父さんが若者相手に必死に戦って最後はあっさり蹴飛ばされるとか、倒され方にも可笑しみがある。
 
映画館の大画面でしか得られない感動ってあるんだなと改めて感じられた映画体験であった。上映期間が長ければあと何回か見に行きたかった。
ところで、グッズがひとつも販売されていなくてガッカリしたのだが、もうちょっとお祭り感を出しても良かったんじゃないかな。でもまぁ、鑑賞者全員サービスのクリアファイルが可愛かったので良しとしよう。

そういえば、本編の前に最新作の『ムファサ』の予告が流れていたが、予告を見ただけでは正直微妙な感じだった。ムファサとスカーが実の兄弟じゃないって『1』のストーリーとどう整合性をとるんだろう。また謎設定を増やすのだろうか。
 
過去にも『ライオン・キング』のシリーズは第1作目と整合性がとれないような物語を作り続けてきた。
存在自体消されたシンバの第一子コパとか、『2』で突然出てきたスカーの妻のジラとその息子たちとか(『1』の時どこにいた?)、シンバと会う前にティモンと会ってたことになった『3』のラフィキとか(『1』では初対面だったはず)、いつの間にか王位継承第一位としてでてきた『ライオン・ガード』のカイオンとか(『2』ではその存在すらなかったはずだが)、実はムファサがライオン・ガードだったとか。
 
それぞれの作品には面白さがあるけど、土台となる部分で疑問が浮かぶと興が醒める。そういうもんだと割り切ってしまえばいいんだろうけど、なんだかな。
 
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木野 エルゴ

自由と孤独を愛する素浪人。映画と旅行、料理その他諸々趣味が多い。俳優・声優の宮本充さんの吹き替え作品ファン。

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