宮本充さん吹替作品についてのひとり語り

SNSのアカウントを持っていた頃、宮本さんの誕生日には毎年勝手におすすめ作品を集めて投稿していた。しかし、今はブログのコンテンツ内に常時掲載している状態なので特にやることもない。なので今まで見てきた吹替作品についてつらつら書くことにした。

画好きだった父の影響で、割と幼い頃から洋画吹替には親しんできた。宮本さんの声を最初に認識したのは多分地上波で放送していた『スピード』のキアヌ・リーブスだと思う。それ故に、今でもキアヌの声は宮本さんじゃないと違和感を感じる。なので宮本さん吹替じゃないキアヌ作品は専ら字幕で見ている。これはイーサン・ホークについても同じで、『ビフォア・サンライズ』の3部作、『ガタカ』などの影響で自分の中ではイーサン=宮本さんなのである。どちらも今では全く配役されることが無いので悲しい。

ーサン・ホーク作品で一番気に入っているのは『デイブレイカー』。人類の大半が吸血鬼になったという世界で、イーサン演じるエドワードは、すでに吸血鬼になった弟のフランキーから激重愛情を向けられ吸血鬼にさせられそうになっている。エドワードを助けるライオネルにはウィレム・デフォー。『プラトーン』でも『処刑人』でも宮本さんが主演を吹き替えている作品のウィレム・デフォーは大体助けてくれる。吹替は安定の江原正士さん。敵役のサム・ニールの吹替は同じ劇団の金尾哲夫さん。

尾さんとは他にも『三銃士』で敵役で共演している。この作品、キャストが個人的に好みでアラミスが山寺宏一さん、アトスが堀内賢雄さん、ポルトスが玄田哲章さんというそれぞれ単独で主演を張れる人ばかりである。そんな中で宮本さんのダルタニアン(クリス・オドネル)はやんちゃで未熟者でとにかく若い。金尾さんが声を当てたロシュフォール伯爵役はマイケル・ウィンコットで、この人は嫌な役がとにかくよく似合う。

イケル・ウィンコットの悪役が印象的な作品といえば『クロウ/飛翔伝説』のトップ・ダラー。吹替は大友龍三郎さん。強い。主役のブランドン・リーのメタルテイストなメイクと退廃的なビジュアルがナルシシズムを感じて良い。愛する人を失って復讐に燃える孤独で繊細な役の雰囲気に宮本さんの声がよく合う。テレ東版の吹替はレンタル用のDVDや配信サイトではお目にかかれないが、4KリマスターのスペシャルエディションBlu-rayに入ってる。

友さんと宮本さんの共演作といえば『キャデラック・レコード 音楽でアメリカを変えた人々の物語』がある。大友さんが吹き替えるハウリン・ウルフ、中盤から登場するキャラクターなんだけど、演じるイーモン・ウォーカーの目力と大友さんの声の圧が強烈で誰も敵わない感がある。強い。今いる若手や中堅の中からこれほど威厳のある演技ができる役者がいるだろうか。エイドリアン・ブロディ演じるレナード・チェスはブロディが今まで演じた役の中でもスマートかつ公平な人物で、とにかくかっこいい。さらにその声が宮本さんであれば言わずもがな。あと、リアーナの歌声がめちゃくちゃ痺れる。

イドリアン・ブロディは宮本さんが今でもコンスタントに吹き替えてる俳優のひとり。子どもを亡くしてたり、トラウマを抱えてたり、散々痛めつけられてたり、陰気そうなブロディを見つけたら大体吹替は宮本さんだと思って間違いない。ちなみにウェス・アンダーソン作品のブロディは宮本さんじゃない。というか、コメディ作品で宮本さんがブロディを吹き替えることはほぼない。これはやはり『戦場のピアニスト』の印象が強いからだろうか。コメディではないが、比較的明るいキャラクターのブロディで宮本さんが吹き替えしている作品は『キングコング』だろうか。あれだけコングに振り回されてナオミ・ワッツが潰されないあたり絵的にコメディと言えなくないし、ジャック・ブラックも出てるから実質コメディか。

ロディと同じく、何気に最近よくキャスティングされてる印象がある俳優にガイ・ピアースがいる。とはいえこちらも決まったタイプのキャラクターでのみ配役されているような気もするが。だいたい悪役。もっといえば、主人公の上司orメンターで終盤に黒幕だと発覚するタイプ。『ブラッドショット 』と『ウィズアウト・リモース』は典型的。『ふたりの女王 メアリーとエリザベス』は厳密に言うと裏切りはしないけど、主人公をうまく誘導すると言う点では似てる。『欲望のバージニア』のチャーリー・レイクスは徹頭徹尾ゲスい悪役。やられ方まで見事なので『ブラッドショット 』と『ウィズアウト・リモース』の微妙な最後でモヤモヤした後に見るとスッキリする。ちなみに、ピアースの役が善人だったり主人公だったりすると声が小山力也さんになる。

近ではエドワード・ノートンもちょくちょくキャスティングされてる印象。個人的に意外だったのが『バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)』以前で宮本さんがノートンの吹き替えをした作品は1996年の『世界中がアイ・ラブ・ユー』だけだったことで、てっきり2000年代もいくつか吹き替えてると思ってた。宮本さんとノートンの顔や雰囲気が似てるからかもしれない。『バードマン〜』のマイクは才能があっても非常識な人物で部下や後輩にはしたくないタイプだが、真面目なシーンではとことんカッコよく見える。その二面性が宮本さんの声にもよく出ている。

ナイブズ・アウト:グラス・オニオン』のマイルズ・ブロンはイーロン・マスクのパロディと呼ばれるくらい金と名誉はあるが無知で滑稽なキャラクターで、ノートンの飄々とした雰囲気に似合ってる。ブロンの意味不明なセリフも宮本さんの喋りだと説得力が出てくるから面白い。ちなみにこの作品の制作はマスクが某SNSを買収するより前のことなので、マスク個人をパロディしたと言うより『ありがちな成り上がり富豪』の概念を具現化したものといえる。

は戻るが『バードマン〜』の主人公リーガン・トムソンの吹替は同じ劇団の牛山茂さんで、宮本さんとも何度も共演している。この作品自体が舞台の裏側を描いた作品なので、リハーサルの様子は劇団の裏側を見ているような気さえしてくる。他の共演作品『クリスティーナの好きなコト』では、宮本さんが吹き替えるピーター(トーマス・ジェーン)の兄ロジャー(ジェイソン・ベイトマン)で掛け合いも多い。他にも牛山さんと宮本さんの共演作には『ゾウズ・フー・キル 殺意の深層』がある。個人的にとても気に入っているデンマークのクライムサスペンスシリーズで、牛山さんは主人公の刑事カトリーネの上司マグヌス・ビスゴー(ラース・ミケルセン)の声をあてている。ラース・ミケルセンはマッツ・ミケルセンの実兄。宮本さんはカトリーネの相棒で犯罪心理のプロフェッショナルであるトーマス・シェファー(ヤコブ・セダーグレン)の吹き替えをしている。冷静沈着で家族思いだが、ワーカーホリック気味で犯罪心理にのめり込むあまり常軌を逸した行動に出てしまうこともある困った人。派手な作品ではないが、じわじわくるスリルと適度に淡白な人間関係がとても良い。セダーグレン、宮本さんの声がぴったり合うからもっといろんな作品で見てみたい。

ラマシリーズの吹き替えといえば忘れてはならないのが『アリー my Love』。今から25年前に放送されたリーガルコメディなので今の感性で見るとかなりイタい表現が多い。とはいえ、そのマイナス面を度外視してもキャストの振り切れた演技はみていて楽しい。宮本さんが声を当てたビリー・トーマス(ギル・ベローズ)は主人公アリーの元カレで同じ弁護士事務所に在籍する優秀な弁護士。元カノと妻との間で右往左往する様子が滑稽。その反面、法廷シーンでの凛とした態度はさすがにかっこいい。
ベローズの吹き替えを担当した作品は他にも『24 TWENTY FOUR リデンプション』がある。こちらのベローズは『アリー〜』の頃よりだいぶ貫禄が出ていて、吹き替えの演技もだいぶ渋い。

24 TWENTY FOUR』の主人公ジャック・バウアー(キーファー・サザーランド)の吹き替えの小山力也さんは同じ俳優や同じ役にキャスティグされることが多く、また共演も多い。『戦火の勇気』では小山さんが主人公のサーリング中佐(デンゼル・ワシントン)、宮本さんがイラリオ特技兵(マット・デイモン)を演じている。サーリングとイラリオの共演時間はそれほど多くないが、作品のテーマを担う重要なシーンで交わされる会話は重厚。
人の声のバランスからか、関係性が深いキャスティングだと宮本さんが軽い性格、小山さんが硬派な性格になる印象が強い。顕著なのはイーキン・チェン(宮本さん)とルイス・クー(小山さん)の共演作品で『特攻!BAD BOYS』のキング(イーキン・チェン)とジャック(ルイス・クー)、『天上の剣』の玄天宗(イーキン・チェン)と丹辰子(ルイス・クー)。ルイス・クーではないけど『風雲 ストームライダーズ』の聶風(イーキン・チェン)と歩驚雲(アーロン・クオック)もそんな感じ。宮本さんが吹き替えるイーキン・チェンは軽い男が多い。一昔前の香港アクション映画は荒唐無稽で笑えて良いカウチポテトのお供になる。
ロード・オブ・ザ・リング』シリーズでは小山さんが兄のボロミア(ショーン・ビーン)、宮本さんは弟のファラミア(デビッド・ウェナム)を演じた。共演シーンがなかったのが残念。
洋画ではないが、『ぼくらのかぞく』というPS2のゲームでは父(小山さん)と息子(宮本さん)というのもあった。


語りたい作品はたくさんあるけど、今回はこの辺で。

今後もこのサイトでは宮本さんの出演作品の情報を更新していく予定。
宮本さんの更なるご活躍(個人的な希望で言えばぜひ吹き替えで)を期待しています。

木野 エルゴ

自由と孤独を愛する素浪人。映画と旅行、料理その他諸々趣味が多い。俳優・声優の宮本充さんの吹き替え作品ファン。

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