脚本:ジル・セガル
翻訳:角山元保
演出:村田元史(演劇企画JOKO)
上演期間:2017/11/09〜2017/11/26
会場:Pit昴
劇団昴「ポーランドの人形遣い」のステージツアーに参加した時の覚書き。
メモと記憶をたよりに書き起こしているため、齟齬があるかもしれないのでご容赦を。
舞台装置のお話
(舞台監督の三輪さん、演出助手の田渕さん)
舞台監督の仕事は舞台に関わる全てを取り仕切る総責任者。演出助手の仕事はスタッフのスケジュール調整、休憩・開始の合図などなど。
プロセニアムアーチのエイジング処理。プロセニアムアーチとは、舞台前方に設置された舞台を覆う額のようなもの。照明器具など見えると不都合な物を隠す効果がある。今回は戦争直後という事で、ひび割れたコンクリートの風合いを出している。室内もエイジング加工がされている。
舞台奥のキッチンの水場や鍵を開ける音、ストーブの火が爆ぜる音など、実際の音が聞こえないところは個別にスピーカーが設置してあり、合計で19個ある。
場面転換はないけれど、時間経過での光の移ろいや電気のオンオフが多い。照明が変化するタイミングが上演中約70回ある。
シュワルツコフがロビーから管理人を呼びながら上がって来るシーンは録音ではなく生。遠くから歩いて来たり、効果をつけたりして遠くから近づいて来る雰囲気を再現している。
ストーブに火をつける動作の時、ストーブの中でマッチを釘とすり替えて、釘でストーブを擦りマッチの音を再現している。直後に火の爆ぜる音と共にストーブから赤い照明が点いて、天井と舞台上を赤く染める。
研究生の紹介
高山優介さん
今回の舞台では消え物(飲み物や食べ物)の準備を担当。
作中に出て来るウィスキーについてのエピソード。シュワルツコフがカバンに入れて持って来るので、烏龍茶だとどうしても泡が立ってしまう。酒を入れてウーロンハイにしても中々消えない。ティーバッグの紅茶に変えてみるも、濁りが出てしまう上に色が薄いのでブランデーに見えてしまう。最終的にはジャワティーにおさまった。
作中に出て来る半熟たまごの正体は寒天牛乳とみかん。喉越し重視。ちなみにサンドイッチのようなものの正体はハムらしい。舞台奥のキッチンに置いてあるヴォトカは旧ラベルで現在は生産されていないもの。まだちょっと残ってるらしい。
遠藤鮎喜さん
今回の舞台では人形のメンテナンスを担当。
リュシェール人形はおよそ120センチ、重さは1キロ前後。姿勢を保持するために関節部分にゴムが仕込めるようになっている。フィンケルバウム人形。この作品唯一の糸人形。細かい動きができる。パパ人形。宙返りのシーンがあるので、腰部分にハンドルが付いている。膝から下が勢いで前に行かないように、他の人形より膝頭が前にせり出している。人形は全部で19体。帰る前に布を被せてから帰るのだが、ある日かけ忘れた所、人形集団の奥の方から不審な音が…
古谷みちるさん
今回の舞台では衣装の保管と衣装替えの手伝いを担当。牛山さん演じるポポフの衣装について。コートは本場ロシア製の軍服。ヤフオクで購入。極寒の地の衣類らしくものすごく分厚い上に3キロある。ハンガーが壊れた。ポポフの衣装だけで4キロほどあり、一人で脱ぎ着するのが大変困難。
クイズとじゃんけん大会
ステージツアー後は宮本さんのイラスト付きキャストの直筆サイン入り色紙をかけてクイズ3問とご本人とのじゃんけん大会。
舞台装置こぼれ話
実際の階段は3段。一つ約15センチ高。舞台の設定は5階の屋根裏部屋。それをあたかも階下から上がって来るかのように音響と合わせて再現する。
フィンケルバウムが1度だけ部屋から出るシーン。手洗い場はドン突きになっていて奥行きがない。多分中西さんはそこで水飲んでる。
管理人がラジオを大音量で流すシーン。実はラジオのニュースを読み上げているのは牛山さん。加工処理されていてわかりづらくなっているが、近くで聞いてるとすぐわかるらしい。ちなみに控え室のすぐ近くで流すので、非常にびっくりするらしい。
ざっくりした所感
大きな劇団や事務所が主催するプロデュース公演では本職の舞台制作会社が小道具や大道具を作るんだろうけど、中〜小規模な劇団になると全て自分のところに所属するスタッフで賄わなきゃいけないの、端的に言って大変だと思う。そんな中で創意工夫されているのが見られるステージツアーはなかなか貴重である。
↓↓ネットで見つけた「ポーランドの人形遣い」の原作本。日本では翻訳されたものが出版されてないので中身は全部英語↓↓
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