演技の基礎理論のワークショップ

「スタニスラフスキーシステム」通称スタシスのワークショップに行った時の覚書を残しておく。

スタニスラフスキーシステムとは

19世紀後半に活躍したロシア(ソビエト連邦)の俳優兼演出家であったコンスタンチン・スタニスラフスキーが提唱した演技理論のことを指す。

自分が経験した過去の体験を思い出すことで、役と同じ感情を体験する。紋切り型の決まったリアクションではなく、内面にある感情や心理的なロジックに基づいて役を演じることを目標とする。

↓↓スタニスラフスキー自身が著作した書籍で現在翻訳されているものはこちら。↓↓

俳優の仕事 第一部: 俳優教育システム

著者:スタニスラフスキー・コンスタンチン
翻訳:岩田貴、堀江新二、浦雅春、安達 紀子
目次(一部)
第1章 ディレッタンティズム
第2章 舞台の芸術と舞台の職人芸
第2章 行動。“もしも”、“与えられた状況”

俳優の仕事 第二部: 俳優教育システム

著者:スタニスラフスキー・コンスタンチン
翻訳:岩田貴、堀江新二、安達 紀子
目次(一部) 
第1章 具象化への移行
第2章 体操
第3章 声楽と話法

俳優の仕事 第三部

著者:スタニスラフスキー・コンスタンチン
翻訳:岩田貴、堀江新二、安達 紀子
目次(一部)
第1章 1911年-1919年の手帳より
第2章 グリボエードフ『知恵の悲しみ』
第3章 ある公演の話(教育小説)

役に入り込むという事

そのまま表層をなぞるのではない。
感情を表現するのではない。
自分に嘘をついてはいけない。

怒ろうとか泣こうとしても身体は拒否反応を起こすので「なぜ怒りたいのか」「なぜ泣きたいのか」を想像力で生み出し、「もし自分がそう思わざるを得ない状況になったら」を想像して行動する。

例えば「ペットボトルを腐ったミカンと見立てて、それを手にとって相手に手渡す」といった動きをしなければならない時。目の前のペットボトルは一度忘れて、もし腐ったミカンが実際あったらを想像してそれをそのまま行動する。人間は実際にあることよりも、想像したことに基づいて生理的反応を示す。より想像が鮮明であればあるほど、演技は真に迫ってくる。

役作りの手始め

まず、与えられた役を詳しく考察し、客観的に自分の違いを明確にする。そこから、その違いを埋めるべく「自分がどういう立場や状況になったら、求められているリアクションが出来るかを想像する。

例えば「死んだネズミを、とても嫌な様子で手に取らなければならない」動きを求められた場合。自分自身死んだネズミぐらいで動じないなら、死んだネズミを想像してもあまり意味がない。なので、自分がより求められているリアクションに近づける対象物を想像する。例えばゴキブリとか。見ている側は、演者が何を想像してるかなんてわからない。

大切なのは、求められている演技(リアクション)が「つい、うっかり」出てしまう状況を想像すること。

短い台詞を色々な言い回しで演じてみる

スタニスラフスキー・メソッドからちょっと離れて実験芝居もやってみた。

およそ30人が参加。渡された台本は3人芝居で台詞は全部合わせて10個程度。ト書きも最小限。
どれだけ違う雰囲気の芝居になるか、30人で1人必ず2回廻ってくるように合計20回上演してみる。

まず、台本から確実に分かっていることを見つける。

次に、不確定要素から読み取れる様々な可能性を検証してみる。それが場所や関係性、相手をどう思っているのかで、様々なパターンを考えてみる。台本には書かれていない要素(新しい登場人物や出来事)を複雑に取り入れ、更に行動の可能性を広げて行く。

同じ設定でも演じる人が違うだけで見てる方の解釈が変わる。少ない情報だからこそ解釈の違いが何通りもできて実に興味深かった。

ワークショップを受けて

所詮素人なのでね、どこまで理解できたかは分からない。それでも、演技は面白いと感じることができたので参加してよかったと思う。たまには自分の専門外の世界に飛び込んでみると色々発見できることがある。趣味として芝居をするのも面白いかもしれないし、今回学んだことを元に舞台を見るのもいい。

 

↓↓今まで見た舞台の感想↓↓

木野 エルゴ

自由と孤独を愛する素浪人。映画と旅行、料理その他諸々趣味が多い。俳優・声優の宮本充さんの吹き替え作品ファン。

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