BS1スペシャル「是枝裕和×運命の女優たち~フランスで挑んだ1年の記録~」

BS1で放送していた「是枝裕和×運命の女優たち~フランスで挑んだ1年の記録~」の感想。

「自分より作品を可愛がらなきゃいけない」

自分がよく見えていて、何が出来て何が出来ないかを取捨選択した上で出来ない事を誰かに託せる。「出来ないのに『自分が全部やる』っていうのは唾棄すべき自己愛だよね」是枝監督の言葉には説得力がある。言うのは簡単だけど実際に判断することは難しい。

「真実」まだ見てないからネタバレになるかと思ったけど、このドキュメンタリーを本編より先に見てよかった。
是枝監督の初期作品「幻の光」「ワンダフルライフ」「DISTANCE」はすでに見ていた。特に「ワンダフルライフ」は好きな作品。ここ数年日本映画自体を見ていなかったからずっとスルーしてたけど、このドキュメンタリーで他の是枝作品も見たくなった。

日本とフランスの違い

英語圏ですらない国で日本人監督が映画を撮ることということが、どれほど大変か。通じない会話、正しく演出を伝えるだけでも一苦労。全く知識のない言語で作品を作るストレスが、見ている方にも伝わってきてヒリヒリしてくる。

また、国内との違いと言う点で印象に残ったのが、撮影前の打ち合わせ。
「フランスは10時間以上働きません」と現地スタッフが監督に対してキッパリと言うところ。考えてみればそれは契約を守るという意味で当然の権利なのである。作品ができていないからといって長時間拘束する事は違法であり、計画通り遂行できない雇用側の落ち度であり甘えと言える。

さらに、大女優カトリーヌ・ドヌーヴが超マイペース。
そういえば昔、自分が働いていた会社でデザイナーの上司が「自由になりたかったら文句を言われない実力をつけなさい」と言ってた。ステレオタイプな見方かもしれないけど、フランス女優の自然体でストレートに思った事を言うところは凄く羨ましい。

 

是枝監督の日本映画に対する危惧や、物を作る人の矜持には共感できる部分が多い。最近、予告を見てワクワクするような邦画作品に出会っていないから。予算の問題もあるんだろうけど、どれも似たり寄ったりに見える。一時期、邦画を結構見てただけに現在の状況にはガッカリしてる。

話が逸れるけど、ドキュメンタリーはやっぱり声の仕事をしてきた人を起用して欲しい。発音が不安定なナレーションって思ってる以上に耳障りで内容に没入出来なくなる。そこが残念。

あと、今回のイーサン・ホークの役柄が宮本充さん吹き替えどストライクなんだけど、宮本さんじゃないってどういう事。まぁ、そもそも主演ふたりの声が、吹替主体の役者じゃないから結局字幕で見るんだけど。何はともあれイーサンは宮本さんがいい。

木野 エルゴ

自由と孤独を愛する素浪人。映画と旅行、料理その他諸々趣味が多い。俳優・声優の宮本充さんの吹き替え作品ファン。

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