すごい映画を見た。2時間弱と今時の映画にしてはそこまで長くない映画だけど、体感時間1時間弱だった。前段階でいろんな批評家が事細かに解説していて(読んではいないけど)、いろいろ考えられる映画なんだろうなと思ったので、あえて何も考えずに見てみたらキャスティングがドンピシャすぎて泣いた。
ネタバレってほどのことは書かないつもり。
個人的にコメディ寄りのライアン・ゴズリングが好きである。一番好きなゴズリングは『マネー・ショート』のジャレド・ベネット。次に『ナイスガイズ』のホランド・マーチ。今回はそれに比肩する魅力を持ったスーパー・ゴズリングだった。真面目な顔して面白い。表情や手の動き、体の動きがキチンとコメディのツボを抑えてる。『マネー・ショート』の頃から彼の笑いのセンスはどこか杉田智和さんに通じるところを感じていて、吹き替えるなら杉田さんが良いと思っていたんだけど、今回のケンはまさしく杉田さんに吹き替えをしてもらいたかった。今回の主役はマーゴット・ロビー演じるバービーだけど、個人的には、ラストでケンが自意識を確立して自立できたことが嬉しかった。お前はお前で良いんだよ…!
そして別のケン役のシム・リウ。この作品にふさわしいメインにもなれるし、脇役としても光を放つ変幻自在な存在感がライバル・ケンにぴったりだった。さすがフリー素材で活躍していただけのことはあって、自分の見られ方をよく分かってらっしゃる。ダンスもキレッキレだし最高。
さらに、人間界で重要なキーパーソンになるグロリアに『アグリー・ベティ』のアメリカ・フェレーラを起用したところが最高にグッジョブ。バービーとのつながりが見られるシーンは結構グッときた。ストーリーのコアとも言えるバービーランドでの説得シーンも熱かった。娘役のアリアナ・グリーンブラッドも今時のティーンぽくて理詰めで攻める感じが良かった。途中でガラッと心変わりしたところが突然すぎて「どうした?」ってなったけど。『イン・ザ・ハイツ』のニーナ役の頃に比べて大きくなったなぁ。
ケイト・マッキノンは『サタデー・ナイト・ライブ』と頃と同じく目つきの鋭い核心を突いてくるバービーだった。アウトローで風変わりな役が抜群に似合う。
主演のマーゴット・ロビーをはじめとするキャストが、自分と大体同年代だから親近感が湧いて他の作品に比べるとだいぶ入り込みやすかった。人形遊びはほとんど通ってこないで大人になったタイプだけど、ドールハウスで人形遊びするって確かにこんな感じっていうのをかなり細かく再現してて楽しかった。抽象的な人間界のおじさんたちの描写やバービーの歴史、派手なファッションや強烈な背景など、色んな切り口があって、また見たくなる久しぶりに「ソフト化したら買いたいな」と思う作品だった。
そういえば約7年ぶり※ぐらいに映画のパンフレットを購入した。色合いも写真も素晴らしい。ミッジ役が『プロミシング・ヤング・ウーマン』の監督エメラルド・フェネルと知って驚いた。多才だ。
※『ナショナルシアターライブ』関連は別。それ以外で最後に買ったのは『ドクター・ストレンジ』。
グレタ・ガーウィグの作品は『フランシス・ハ(共同脚本・主演)』が好きすぎて『レディ・バード』と『ストーリー・オブ・マイライフ/わたしの若草物語』は途中までしか見てない。時間と気分が合えば多分見る。
マーゴット・ロビーの作品は『アニー・イン・ザ・ターミナル(製作・主演)』が好き。彼女が制作として関わる作品は主旨が一貫しているので、安心して見られる。プロデューサーとしてのセンスが好き。次は何を仕掛けてくるのかがとても楽しみである。