劇団昴 「評決 The Verdict」ポストトーク

劇団昴 「評決」のポストトーク。
メモと記憶を頼りに、その日のうちに書き起こしたもの。会話調で書いてはいるものの、発言者の意図と異なる部分があったり、不明な点が多々あるため、あくまで「こんな感じのことを言っていた」程度で読んでいただきたい。

上手より、司会の高山佳音里さん・演出の原田さん・フランク役の宮本充さん・モー役の金子由之さん・ドナ役の林佳代子さん・エドガー役の山口嘉三さん・進行の宮島岳史さん。

全員衣装から普段着に着替え完了。デニムのパンツ率高し。宮本さんはTシャツに薄いブルーのジャケット。

司会の高山さんより、追加公演のため約30分弱しか時間が取れないとのアナウンス。そして役名と自己紹介。

「評決」について

原田さん「僕の座ってる椅子が転換用の椅子でよく滑るんだけど」
よく見ると原田さんの椅子だけ足元に金色の金具が付いている。
「劇団スベル」と小さく呟いて金子さんと笑い合う宮本さん。
原田さん「制作の方と実際に会って何をやろうかって話になって…なんで『評決』になったんだっけ?」
宮本さん:「『氷結』飲んでたからだよね?」
「劇団スベルー」と言いながら金子さんと笑ってる宮本さん。

原田さん「僕も(制作の)荒川さんも法廷劇が好きで、いい脚本がないかって探してたんですけどあんまり硬派で有名な戯曲ってないんですよね」
何か作品名を言ってたけど聞き取れなかった。
高山さん「『グレンギャリー・グレンロス』とか」
原田さん「あれは有名じゃないから」
高山さん「『摩天楼を夢みて』」
原田さん「実力のある劇作家ってアメリカでもだいたい映画に取られるんですよね。それで作家を色々探してみたら『評決』って映画に戯曲があるって荒川さんが見つけてきてくれて。戯曲が最初だと思ってたら小説がまずあって。バリー・リードという小説家としては全くの素人だった人が、実際に弁護士で裁判で勝った話を元に小説を書いたらベストセラーになったんです。時代背景はパンフレットに書いたんですけど。パンフレットが暗いところでよく見えないですね」
宮本さん「見えづらいですよね」

原田さん「それが面白いなと思ったのと、弁護士は法廷を存在させるために存在して、ギャルビンが優秀であればもしかしたら教会に雇われてるかもしれない。コンキャノンが失脚していれば被害者の立場だったかもしれない。俳優も分かったような顔で真意を語ってるように見えますけど、役が変わったら全然違うこと言いますから。言葉自体には本質がないと思うんですよ。言葉が本質だと思ってるから、いろんなシステムが間違っているし、正義が好きなように使われてしまう。いろんな正義があったり、いろんな主義があったり。今ってそんな世の中ですよね。真実なんて最初からなくて、後から言葉ができただけだということを演劇人はわかってるんです。だから初めから絶望しているところがあって、こんな平気でいろんなことができるんです。それが面白いと思うんですよね。そんな経緯があってこの作品にたどり着きました。これだけ年配の男の方達が汗かきながらやってるにも関わらず、ファンに女性の方が多いんですよ。昴は凄いなあと思います。そういう劇団だからこそ、そういう芝居がしたいなと思いました」
宮本さん「これは褒められてるんですかね?」
高山さん「確かに今回はおじさま率が高いですね」
原田さん「バリアフリーじゃない舞台でね。稽古場では段差がないですから。(コンキャノン役の)山口さんに「ここは段差ですから」って「わかってるわかってる」って言ってたけど「絶対わかってないな」って。実際に舞台でやるとはぁはぁ息切らしてたりして。映画を舞台にするには非常に権利の部分が難しくて、今回戯曲があったからこそ成立したという本邦初演の作品です」

原田さんが話してる間、山口さんが宮島さんに小声で「時間大丈夫?」と確認していた。

フランク・ギャルビン

宮島さん「ありがとうございました。それでは原告代理人のフランク・ギャルビン」

宮本さん「はい(立ち上がる)宮本フランクみや…充と申します。今日はどうもありがとうございました。(宮島さんに)着席してよろしいでしょうか?」

宮島さん「ご自由にどうぞ。原作映画の大ファンだったそうですが、その主演ということで如何でしたか?」
宮本さん「だいぶ前にBSで録画したのを何回か見て「これ芝居に出来たら面白いだろうな」と。法廷のシーンや陪審員が評決を出すシーンとか面白いだろうなと思っていたら、今回劇団で上演する。しかもポール・ニューマンの役を僕がやらせてもらう…」
原田さん「ポール・ニューマンの役じゃない」
高山さん「異議が入りました」
宮本さん「フランク・ギャルビンの役をやることになりまして」
山口さん「10年前なら俺がやってた役だよ」
高山さん「却下してよろしいでしょうか」

宮本さん「不安だったのが、あまりに何回も見ていて仕草とか脳に残ってることがたくさんありました。ここだけの話なんですけど、以前劇団の外でとても有名な映画を舞台でやったんです。その時、映画を予習で見てしまったらすっかり役が自分の中に入ってしまって、自分がなくなってしまった事があったんです。仕草とか物言いとか、映画をそのまま舞台に持ってきても通用しないところがあって。僕の同級生が見て「宮本ひっどい芝居してんなー」って言われて反省したんです。だから本当に好きなものは注意して、それを超えるようにやらなければいけないなと思ってるんです。今回は越えられたかわかりませんが、ポール・ニューマンとは違うフランクギャルビンが出来たのではないかと思っています」
高山さん「だいたい何の映画かわかりました」
宮本さん「時効なんでここだけの話で」

モー・カッツ

宮島さん「次の証人はモー・カッツ。お名前をお願いします」
金子さん「金子由之です」

宮島さん「金子モーカッツさんは11月の頭からの参加ということですが」
金子さん「本当はやるはずじゃなかったんですよ。3日の日に台本をもらって、大山の稽古場の前のファミレスで読み出したら「なんか結構喋ってるぞ」となって。それで10時くらいから読み出したんですけど、もう冷や汗かいてきて。稽古が2時からだったんですよ。どんどん時間が迫ってくる中で「もういいや、裁判シーン出てないから飛ばして読んじゃえ」と。稽古場に行ったらすでに通し稽古をやってて。台本持って喋ってるんだけど、何やってんだか全然わからない。持ってる台本も完全な台本じゃなくて、ト書きや台詞が直ってなくて「それ違いますよ」って言われちゃって。映画は見てたんでぼんやりと内容はわかってたんですけど、細かい内容はわかってないままとりあえず2週間はセリフを入れる事だけに集中しました。稽古が終わった後、宮本さんと高山さんに付き合ってもらいました。2週間でなんとかセリフを入れて、その後から役のことを考えたんで宮本ギャルビンに比べたら思い入れも全くないですね。でも本番が始まる3日前からモー・カッツという役について考え始めたのでようやく追いついたなという感じです」

ドナ・セントローレント

宮島さん「次の証人は『マドンナ』セントローレント…失礼いたしました。ドナ・セントローレント」
林さん「林佳代子です。今日はありがとうございました」

宮島さん「原田さんの2度目の演出ですがどうでしたか?」
林さん「『クルーシブル』というアーサーミラーの作品ですね。今回はたまに出てくる役なんですけど、出ていないところを埋めていくのが大変でした。コンキャノンに雇われて騙して、でも最後は味方になりたいなって思っている経緯を埋めていく作業が大変でした。言ってることと思ってることが違う台詞が結構あって、それも難しかったです」

エドガー・コンキャノン

宮島さん「次の証人、被告代理人エドガー・コンキャノン」

山口さん「最初、コンキャノンは物凄くいいやつで、若者たちの為に働きかけてみんなから好かれて、悪い臭いが全くしないようにしていて「奥さんに(ペシペシと頬を叩いて)日焼けローションを買ってやりなよ」ってだいぶ高いテンションから入って行きました。「それじゃあ(芝居が)できないな」ってことで、原田さんと僕との共同制作みたいな形でようやくここまできたって感じです。だから自分の中で音が安定してないです。今日は悪蔵みたいな感じになってましたね。まだ安定してないです。(お客さんに向かって)そんな感じしませんでしたか?そんなわけでね、回を重ねる機会をいただければ、ぜひ再演してコンキャノンを作っていきたいですね」

作中に出てきた飲み物について

高山さん「台本にはなかったんですけど、ギャルビンがアイリッシュ、アイルランド人の先祖を持っているということで、ミーハンズバーから色々小道具を借りてきました。牛山さんがやってらしたバーの小道具は本物を借りてきまして」
宮本さん「ギネスとかね。アイリッシュビールが好きでしょっちゅうアイリッシュパブをウロウロしてるんです」
高山さん「アイルランドに行きたいんですよね?」
宮本さん「行きたい。連れてってくれますか?」
高山さん「私アイルランド1周しているので。ビールが美味しいんですよ。ぜひ今日の帰りにはギネスを飲んでみてください」
宮本さん「スポンサーになってるんですか?」
高山さん「なってもらえば良かったですねー」
宮島さんがJAMESONの看板を持ってくる」
高山さん「JAMESONっていうフランクがよく飲んでるお酒」
宮本さん「原田さんの話ではJAMESONが一般的に飲むアイリッシュウイスキーで、Bushmillsが一つ上のお酒。いつもJAMESONばっかり飲んでるフランクが、証人の博士に会って裁判の示談金がもっと取れるかもしれないってことで、いつものやつじゃなくて今日はBushmillsだっていうんですけれども、お客さんにはそんなことわからないですよね」

最終弁論

宮島さん「原告代理人に最終弁論をお願いしたいと思います。」
宮本さん、段取りを忘れてたらしく驚いた様子。チラシを見て何かを思い出す。

宮本さん「裁判長、最終弁論をします。これはすばる倶楽部のチラシです。本日皆さんにはすばる倶楽部に入会するかを判断してもらいます。これは大変難しい判断です…難しくはないんですよ、ロビーで係員に年会費を払っていただければ。これは毎年僕がチラシを描いているのですが、年に1回どんちゃん騒ぎをしましょうという…」
高山さん「パーティです」
宮本さん「パーティ。すばる倶楽部に入会して、ほんのちょっとのお金を払っていただけましたら、チケットが3割引になります。機関誌も送らせていただきます。パーティーにもお越しいただくことができます。まだ入会なさってない方はお申し込みください。1月26日に板橋でパーティをやりますので、是非お越しください」

高山さんから今後の公演についての紹介と閉会の言葉。以上。

2002年の映画版はAmazon Prime Videoで配信中。
原作翻訳本も販売中。

 

評決 [Blu-ray]

主演はポール・ニューマン。共演はシャーロット・ランプリング
監督は『12人の怒れる男』や『その土曜日、7時58分』のシドニー・ルメット。

評決 (ハヤカワ文庫 NV 316)

著者:バリー・リード
翻訳:田中昌太郎

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木野 エルゴ

自由と孤独を愛する素浪人。映画と旅行、料理その他諸々趣味が多い。俳優・声優の宮本充さんの吹き替え作品ファン。

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